コペンハーゲン14
メールマガジン
07年1月1日からブルガリア、ルーマニアがEU加盟を果たすことが決まり、巨大化する欧州・中東欧に続き、巨大市場として台頭しつつあるロシア、GDP成長率が10%を上回るバルト3国、国営企業の民営化を急ぐCIS諸国といった地域の経済状況などの情報を配信しています。

メールアドレス:

→詳しくはこちら


i-modeにて最新経済ニュースをいつでもご覧いただけます。

広告掲載について

トップ > 週刊バルトジャーナル156号から
MEDUSA〜エジプト第1弾 昨今の経済事情〜

 

この所の石油高騰に端するアラブ社会のバブルはドバイの街の変貌を覗けばそのもの凄さを窺い知る事が出来るだろう。

アラブ首長国連邦を代表するドバイに影響を受け、周辺諸国でも同じように石油マネーが不動産市場に流入し、世界の不動産市場が停滞する中でもこの地域は割れ関せずといった感で依然好調を維持している。

しかしながら、アラブ社会でも実際に石油が取れるところと取れない国が存在する。

また、石油があるところでも大量に出るとこともあれば大した量は出ないといった国とに分かれている。

この所、この石油はあるが思う程取れないといった国では物凄いインフレに見舞われており、政府もその対策に急遽腰を上げている。

その一例としてエジプトが挙げられる。

エジプト政府が最近、お米とセメントの外国輸出を禁止にする処置に言明した。

エジプトではこの所セメント価格と米の価格が高騰し政府も頭を抱える状態に陥っている。

商務省では、これらの商品の輸出禁止により、今後も値上がり続ける穀物価格や建設資材価格をある程度抑えられるとそろばんを弾いている。

今の所、お米の輸出禁止は9月末まで続けられる予定とされ、同様にセメントも9月末まで輸出禁止となる。

この1月にも一度エジプト政府は米の輸出禁止を表明したが、結局1ヶ月もしない内に48万5000トンのお米の輸出を承認してしまっている。

前例があることから今回も結局輸出を承認するのではといった憶測も出ているが、今回は過去数ヶ月間の高インフレや国内消費の急増を受けて、予定通り9月末までは輸出禁止は続けられると見られている。

実際、この所のインフレは凄まじく、この数ヶ月間に穀物やパン価格は15.3%から26.5%の高騰となっている。

同様に乳製品も20%を超える値上がりを記録している。

お米の値上がりはこの所アジアでも聴かれるようになっており、今後、バイオエネルギーへの穀物利用を切欠とした穀物価格の高騰は物凄いことになるかもしれない。

食料価格の安定化が最重要とされる国策を取る必要があるが、エジプトの一部では、パンの購入に並んだ市民等が暴力沙汰を起したことで死者が何人も出たというニュースが流された。

食料を理由とした殺傷事件は、エジプトでは1977年に70名近くの死者を出した暴動騒ぎが記憶に残る。

現在、エジプトでは年460万トンの米が生産されている。そして320万トンを国内で消費していることから、140万トンが輸出できる計算になる。

しかしながら最近の穀物価格の高騰でパンやパスタなどの価格の高騰が米消費を増やす結果となり、お米の輸出を規制せざる得なくなったというのが実状なのかもしれない。

セメントの輸出禁止は、ドバイなどの中東を代表とする首都で発生中の建設ブームによりセメントは世界的に不足気味となっており、エジプトでも同様に建設ブームが起こる中、自国で賄えるものは自足したいということから今回の輸出禁止を決め込んでいる。

セメントは、ドバイそして北京で極端な不足となっている。

エジプトのセメント企業ではセメント輸出に高額の価格をつけることで、輸出の自主規制を設けていたが、近隣諸国が実際に買い付けるセメント価格はそれを大きく上回るもので、エジプト産セメント人気が続くといった傾向が続いていた。

どこも収益性が高い外国輸出を好むことは明らかで、セメントの海外輸出が実際どこまで出来るかは現状では不明である。

最大手のMisr Beni Suef CementとSuez Cementの2社では、輸出禁止措置に対してどう対応するかを決めかねている。

ある程度、政府の意向に沿って国内需要にセメントを割り振ることは確かだが、国内市場ではセメント価格は安く、その差額の穴埋めを政府に求めることもあり得ると見られている。

Misr Beni Suefでは、昨年全生産量の半数を海外に輸出している。これを昨年第4四半期に30%の水準まで落としており、更なる輸出減を行うことになるかもしれない。

同様にSinai Cementでも生産量の約21%を輸出に振り向けてきたが、第4四半期には半数となる10.4%にまで削減しており、更なる輸出の割り振りを減らすことになる。

急激なドル安によってインフレ圧力に苦しんでいるエジプトでは、消費者物価指数は昨年12月の6.9%からこの2月には11.5%にまで急上昇した。

エジプト同様、隣国のサウジアラビアでも2月のインフレ率は8.7%に達し、通貨をドルとペッグさせている諸国では、このインフレ圧力への対応を急ぐ必要に迫られている。

1日に1ドル以下で生活を営む国民が1400万人以上いるとされるエジプトでは、現在の食料品価格の高騰に真剣に取り組まざる得なくなっている。

この動きにエジプト政府は早速食料品やセメント、鉄鋼などの物価上昇製品などへの統制に動き出している。

4月3日にムバラク大統領は、111アイテムへの課税改定に乗り出した。

改定では、統制商品と名付けられ、お米、乳製品、食用油などがその対象とされ、これらには一切の関税をかけないことになっている。

同時に鉄鋼、ガラスなども課税対象から外れ、石炭も税率が5%にまで下げられた。

家電、医薬品なども2〜30%で税率が削減されている。

因みにこれまでお米には2%、食用油には2〜10%、乳製品には5〜20%の関税がかけられていた。

政府は、取敢えずこれらの改定により食料、建設資材などへの価格高騰の波を打ち切りたいと期待している。

一方で歳入不足を懸念する声も聞こえている。

これに対しては、観光産業の促進やスエズ運河の通過料金の値上げなどで乗り切ろうとしている。

エジプト政府は、スエズ運河を通る船籍への通過料金をこの4月から値上げに踏み切った。

平均で7.1%の値上げとなるが、船種にもよるが小型船の4.2%から大型貨物船などの船籍では14.1%の値上げとなっている。

通過料の値上げにより3億ドルの増収となる。

これまでスエズ運河を通った船籍の半数が大型船となっており、同運河では深海62フィートであったものを66フィートまで通過出来るようにした為、大型船によっては22万トン級のものまで通過出来るようになった。

スエズ運河から上がってくる収益はエジプトが外貨で稼ぐ収入の実に3分の1を占めており、昨年は46億ドルを稼ぎ出していた。

こういった政策を元にエジプトでは国内のインフレ対策に乗り出している。

資源の高騰、穀物価格の高騰などが今あらゆる諸国でその影響が現れている。

日本では石油への暫定税率が失効したことでガソリンスタンドでは25円ほどの値下げが行われている。

一方で食料品の値上がりは、凄まじく、これまで政府が統制してきた小麦粉の売渡価格はこの春に一気に3割も値上げされたと聞く。

エジプトでは値上がり分を政府が助成金などで補填する動きを取っているが、日本はこれと相反する動きを取っていることになる。

どちらの政策が正しいのか、どちらの国も独自のお国事情があるだろうが、この先も物価上昇は当分続くことだけは確かだろう。




Copyright (c) 2004 CPGBalticsOU All rights reserved.
本ホームページの全部または一部を 無断で複写複製(コピー)することは、 著作権法上での例外を除き、禁じられています。