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トップ > 週刊バルトジャーナル163号から
バルト3国から酪農メジャーの誕生か?!〜バルト3国〜

 

リトアニアから今最も注目される企業が彗星の如く現れた!

Agrowill Group、同社の出現により今後バルト3国で大手酪農メジャーが誕生することになるかもしれない。

創業は2003年と5年前まで遡るが、この4月2日にバルト3国の証券取引所に今年初となる株式公開を果たし、上場後もそのIPOから調達した資金で次から次へと競合他社を買収している。

株式公開では、670万株が公募され、3390万リタス(約16億4000万円)の資金調達に成功した。

同社株は1株が5リタス(約242円)で公募価格が設定され、上場後も他社株が伸び悩む中も順調に株価は上昇をしている。

上場時の説明では、調達資金は現在所有する酪農地を手入れし、より多くの牛を育てたいとしていた。

因みに同社の売上高に占める生乳事業は実に45%に及び、その他では菜種事業が41%を占めている。

バルト3国で酪農企業が株式を公開しているのはリトアニア企業に多く、最大の未公開企業として最近ニュースに名前が出たのがエストニアのTere社で、本来ならAltaCapitalが買収するはずであった。

バルトジャーナルでも何度も取り上げているのでご存知の方も多いと思うが、Tere社オーナーであるAS Kalevの株主Oliver Kruuda氏は昨年KalevとTereの両社をAlta社へ売却することで合意していたが、Alta社が合意通りに買収資金を調達出来ず、少し前に合意自体が白紙に戻っている。

Agrowill Groupは今、エストニアで事業拡大を目指して同業他社の買収に励んでいることからももしかしたらTere社も最終的にAgrowill Groupに買収される事になるかもしれない。

今回最も特筆すべきは、Agrowillが株式市場が最悪時にあるなかでも計画通り資金を調達できた点にある。

なぜ同社に注目すべきと綴るかは、同社の株価を見ても分る。

4月2日に証取デビューを果たした後、2ヶ月間程は市場参加者は同社の方向性を見極める姿勢を貫いていた。

しかし6月に入った途端、市場は同社の戦略を買いと判断し、株価は6.2リタス(約300円強)まで上昇している。

実に24%の上昇である。

この間、ヴィルニスのインデックスは-8.36%という戦績で、同様にタリンでも-6.7%、リガでも-4.76%という散々たる成績である。

実際、この間上場株93社中22社が株価を上げたが、Agrowillの成績は上位5社に入る好成績であった。

最も株価を上げた企業には、買収の噂が上がったリトアニアの医薬品大手であるSanitas、次いでリトアニアの肥料大手Lifosaなどで、Agrowillはこれらに次ぐ株価の上昇を記録した。

因みに上場する同業他社が全社株価を落とした中、同社株が値を上げていることを見ても、今後、Agrowillが業界の中で旋風を巻き起こすことになるかもしれない。

そうこうしながら注目を一身に浴びる同社では、正に次から次へと新たな買収事案を発表していくことになる。

世界的に酪農ビジネスが注目される中、同社の積極的な事業拡大戦略が成功を収める事になれば、独立路線を行く同業他社もアライアンスを結んだり、大手の傘下に入ったりと、業界の再編に影響を与えることになる可能性を秘めている。

穀物高騰を背景に、EUでも農業規制の緩和も議論され始めており、規制緩和が行われればより大手が積極路線で事業拡大を計ることに発展していくかもしれない。

しかしながら、もっと足元を見ると、Agrowillの08年第1四半期の業績は300万リタス(約1億4520万円)以上の赤字を生んでいる。

株価は、業績を無視して、将来の可能性にかけているように見える。

実際の所、酪農ビジネスは儲かるのであろうか?

1回目のIPOでは成功裏に資金調達を果たした同社だが、2回目のIPOが迫る中、どれ程の公募が集まるかが注目されている。

2300万リタス(約11億1320万円)相当の株式が2回目には公募にかけられるが、取敢えず、最大株主がその内の3分の2を買取ることで合意されている。

事業拡大を計る上で新たな買収資金が必要とされる現在、今回の公募には失敗は許されない。

では、同社はどういった買収戦略を立てているのだろうか。

Agrowillは、現在最もエストニアの酪農市場を狙っている。

特にエストニアの酪農産業を支える南部エストニアにAgrowillの傘下企業であるAgrochema Estonia OUがあり、最近、Groupが一丸となって共同で農業センターを立ち上げる計画を進めている。

そして最大の買収ターゲット、Polva Agroの動向が注目されている。

Polva Agroは5つの主要牛乳生産施設をエストニアに有する業界のトップ3である。

Agrochema Estonia OUの計画では今後5年をかけてJogevaに最先端の農業センターを開くことになっている。

同センターでは、生乳加工の他にも、肥料の包装ライン、液体肥料ターミナル、小麦の仕分け作業なども手掛けるという。

エストニア最大の酪農事業者の1社であるPolva AgroがもしAgrowill Groupの傘下となった場合、大きく業界の勢力図が変わることになる。

Polva Agroは、エストニアに2000ヘクタールの土地と2100頭の牛を飼っている。

以前から同社の大株主Jaak Hinrikus氏は、Agrowillへの事業売却に前向きとされ、売上高32億円強のAgrowillの傘下となれば、エストニアでのPolva Agroのシェアも大いに上がることになると期待しているという。

そして6月早々に両社の間で売買合意が成される事に至ったのである。

同じくしてリトアニアの競合Gruduva UABもAgrowillの傘下入りすることで合意が発表されている。

Polva Agroの売上高はAgrowillの半分強を占め、またGruduva UABもAgrowillの半分を占める大手企業である。

これによりAgrowillは事業規模を一気に2倍に嵩上げすることに成功した事になる。

Polvaの買収合意では、6月30日が合併作業の期限となっている。

合併作業が終了すればエストニアではValio、Alma、Gefilus、Atleet、Forteといったブランドを展開するフィンランドのVailoと共に最大の酪農事業者という名誉を分かち合うことになる。

Vailoはアメリカ、エストニア、ロシア、スウェーデン、ドイツ、中国で酪農コングロマリットを展開する北欧の酪農メジャーである。

Gruduvaとの買収合意では、売却合意手続きは6月20日とされ、順調に合意文書に署名されたことを受けて、今後は当局の承認を得て、合併作業に進むことになっている。

株式公開当初には今年の売り上げ高目標は前年期比36%増であったが、既に2社の買収合併によりこの目標も達成してしまった同社では、今後はバルト3国だけに留まらず、中東欧、ロシアへも打って出る計画だと示唆している。

どこまで事業規模を拡大させるかは見通せないが、ロシアを含めるCISや中東欧へも事業を拡げていくとなると、正にAgrowillが世界的な酪農メジャーに成長していく可能性は限りなく拡がっていくだろう。

Vailoをお手本に世界戦略を練り始めたAgrowillブランドが近い将来日本でも知られることになるかもしれない。




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