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トップ > 週刊バルトジャーナル170号から
グルジア紛争、バルト3国への影響は?〜バルト3国〜

 

平和の祭典『2008年北京オリンピック』が開催された8月8日当日に世界を震撼させるロシアのグルジア侵攻というニュースが飛び込んできた。

平和を祝うオリンピック、それも世界の首脳等が顔を揃える開会式の真っ只中にロシアがグルジアへ軍を進めた。

この軍事対立には実はグルジアが先に仕掛けている。

世界のメディアが連日伝えるように世界の世論はグルジアよりで、ロシアが弱国グルジアに侵攻したかのように報じている。

がしかし、オリンピックでロシアが警戒心を緩めると計算したグルジア側が先に普段から言う事を聞かない独立思想の強い南オセチア自治州にロシアがオリンピックで気を抜いている隙を狙って軍を派兵したことで怒り心頭となったロシアが即刻軍を派遣し、世にいうグルジア紛争が勃発したというのが経緯だ。

因みに、一般メディアではグルジアで事業を営む企業についての報道は殆ど耳にしていないが、実はエストニア人でグルジアの金鉱開発会社に勤務するTonu Vetik氏がエストニアのメディアのインタビューに答えている。

同氏によると、事業は現在の紛争に大きく影響を受け、グルジアでの生産ラインは稼動していないという。

同社はグルジアの他、アルメニアでも事業を営んでいるが、会社経営者がロシア人とグルジア人の共同経営となっており、ロシア側の銀行に開設している銀行口座が凍結され、尚且つ、グルジア国内の採掘施設はすべて破壊された為、グルジアでの事業は諦めざる得ない状態になっている。

バルト3国にとってグルジア問題はある意味とても重要な意味を成している。

国内に多くのロシア国民を抱えるバルト3国、取り扱いを間違うと、グルジア同様にロシアが侵攻してくるのではという懸念を感じているのだ。

グルジアのサーカシビリ大統領は、この懸念を指摘するように『次に狙われるのはバルト3国だ!』と述べている。

実際にもしロシアが侵攻するのがバルト3国になるかは懐疑的ではあるが、その時の為の準備を今から整えておかなければならない。

ただし、もし次にロシアが侵攻をするとすればウクライナやモルドバなどの国内で紛争の種を抱えている地域になる公算が高いだろう。
 
*ウクライナでは東ウクライナが親ロシアで、モルドバではロシア人が大多数のドニエストル地域がグルジア同様にモルドバからの独立を目指している。

話をグルジアに一旦戻すと、グルジアに軍を派遣したロシアの狙いは、グルジアの石油/ガス・パイプライン権益があると言われている。

グルジアにはバクー・トビリシ・ジェイハン・パイプライン、所謂BTCパイプラインというのが通っている。

ロシアにとっては、このパイプラインは欧州へのエネルギー外交を行使するのにとっても厄介な問題となっていた。

このパイプラインの存在により中央アジア産の石油ガスがロシアを迂回せず、欧州に輸出できる。

そして、何故だかグルジアが南オセチヤ自治州に侵攻する前となる8月5日にこのBTCの一部区間が爆破されている。

この爆破で最も得するのはもちろんロシア。

この爆破によりアゼルバイジャン国営石油やイギリスの石油会社BPが原油輸送を中止せざる得なくなり、已む無くロシアを迂回するバクー・ノボロシースク・パイプラインを使わざる得なくなってしまった。

この辺の話は他でも取り上げているのでここでは取り上げないことにする。

本題となるバルト3国への影響であるが、今、バルト3国で議論されているのは、もし実際にロシアが侵攻してきたらどうするかという一点だ。

そこでよく指摘されるのが、バルト3国は既にNATOに加盟しているからその時には必ず守ってもらえるという日本でも日米安保があるから万が一の時は大丈夫といった議論に似たものがある。

では本当に大丈夫なのだろうか?

エストニアにはNATO関連施設としては、TAPAに研究及びトレーニング施設がある。

ただし、ここは軍事施設ではなく、もしロシアが攻めてきたら全く役には立たない。

そこで今、エストニアではNATOに実際の軍施設を誘致してもらうといった話も持ち上がっている。

そしてラトビアでも本当にNATOは有効か?といったことが話題に上がっている。

これまでに、実際にラトビアへロシア軍が進軍してきたら、NATOはどこから、どれ位の時間で、どれ程の規模でラトビアへ駐軍するのかも全く議論されてきていない。

この点に関してはラトビア国防省でも懸念を感じてはいるが、想定では、NATOが軍事施設を置いているリトアニアから派兵されることになるとされている。

ただし、やはり規模に関しては全く想定が付かない問題で、今回のグルジア紛争をきっかけに新たな議論がなされる必要に迫られている。

エストニア、ラトビア、リトアニアを最も懸念させたロシアの行動に最近ロシアがバルト海艦隊の増強に励もうとしていることが挙げられる。

国内にロシア人居住者が多いバルト3国ではあるが、今の所、民族問題にはあまり懸念を示してはいない。

ただ、諸因の根源になる可能性を危惧しているに留まる。
 
だから、先にも述べたようにロシアが石油ガスといったエネルギーを利用して欧州を跪けようとし、それに反した諸国へ軍事行動を起こし、攻め入った場合のことの方をより危惧している。

因みに、欧州の石油及び天然ガスのロシアへの依存度は、欧州委員会の06年度資料によると、石油で34%、天然ガスで42%に上っている。

エネルギー価格の高騰で国庫が潤ったロシアでは、この地域に最大の影響を齎すであろうロシア・バルティック艦隊が、今、核弾頭の搭載を目指しているという。

西側メディアでは、冷戦崩壊後初めてとなるバルティック艦隊に核弾頭の配備をロシアが計画中だと報じている。

NATO、欧州、そしてアメリカとの軍事協力を凍結することを明らかにしたロシアは、今正に何でもあり状態となっている。

英サンデータイムズによると、ロシアはカニングラードのバルティック艦隊所属の潜水艦、巡航艦、艦隊などに核弾頭の装着を計画しているという。

チェコとポーランドが合意したミサイル防衛(MD)施設問題から軍の増強を急ぎたいロシアとしては、今回のグルジア紛争を新たなきっかけとして軍増強の正当性を主張している。

この動きに北欧諸国も懸念を示しているが、ロシアの外交筋から核装備の連絡を既に受けていたというスウェーデンでは、この動きは驚くようなものではなく、既にカニングラードには核戦力が置かれているのは周知の事実だとして、問題なのは、ロシアが世界を核で威嚇できるといった世界観を未だに持ってることが残念だとスウェーデンの外務省では述べている。

グルジア紛争でもアメリカを主体にポーランド、ドイツ、スペインなどのフリゲート艦等が10隻ほど集まっているが、これに対してもロシアの軍関係者は本気でロシアの黒海艦隊が動けば数時間で敵艦隊は壊滅すると強気の姿勢を貫いている。

オイルマネーで潤ったロシアとしては、軍拡は然程大きな問題ではなく、経済基盤を崩し始めた西側を軍事力そしてエネルギーの供給というカードを使って、今こそ追い落としを計っている。

バルト3国では、ロシアの軍拡と同じ様にロシアに石油やガスを大きく依存する現状を踏まえ、エネルギーの供給が止められることを懸念している。

バルト3国やポーランドではNATOにより厳しい態度でロシアと向き合うことを望んでいるが、一般市民という視線に立つと、日々の生活を脅かされる懸念がどうしても先に来てしまう。

バルト3国としては、正にエネルギーの独自確保とNATOとの連携による軍備の増強が死活問題になりつつある。




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