タリン冬景色 2010年1月
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07年1月1日からブルガリア、ルーマニアがEU加盟を果たすことが決まり、巨大化する欧州・中東欧に続き、巨大市場として台頭しつつあるロシア、GDP成長率が10%を上回るバルト3国、国営企業の民営化を急ぐCIS諸国といった地域の経済状況などの情報を配信しています。

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トップ > 週刊バルトジャーナル174号から
噂は本当か、バルト3国からも銀行破綻の危機?!〜バルト3国〜

 

前編:世界金融危機と北欧金融

世界中が金融恐慌に陥るのではないかと恐怖に慄いている。

実際、アメリカのメリルリンチの破綻に始まり、世界の巨大保険グループAIGの実質国有化、その後もオランダの金融グループ フォルティスやデクシヤに火花が飛び、同時にイギリスの住宅金融ブラッドフォード・アンド・ビングレーも国有化、そしてアイスランドの同国第3位のグリトニル銀行が同じく国有化され、金融システム崩壊を懸念して、アイスランド政府は預貯金と債券を向こう2年間政府保証すると発表した。

この動きに続くようにアメリカでは金融安定化法の可決に必死になっていた。

一旦否決された同案も預金保護をこれまでの10万ドルから25万ドルに引き上げたことで10月3日漸く同法案が通り、7000億ドル(約74兆円)が債権処理に充てられることになった。

この預金保護、所謂ペイオフ、は金融先進国ではその殆どが1000万円前後を目安にしている。*日本も1銀行1000万円制をとっている。

そんな世界的な金融システム不安、強いて言えばクレジットクランチ(信用収縮)が世界を恐慌の恐怖へと導いている。

クレジットクランチって?

という方もいるでしょうから簡単に説明すると、金融機関同士でお金の貸し借りが滞り、資金の流動性がなくなってしまったと言えば何となく想像つくでしょうか。だから、各国の中央銀行が必死にドルを市場に投下しています!

そしてここにきてこのシステム不全とは距離を置いていたと見られた北欧の金融業界へも欧米同様にクレジットクランチが襲い掛かっている。

先にあげたアイスランドの例がその最たる所だが、北欧の金融地、スウェーデンでこの金融業界の再編に巻き込まれそうな銀行の名前が市場に駆け巡っている。

その再編の嵐に巻き込まれるとして最も懸念される銀行はSwedbankである。

同行はバルト3国でも最大シェアを誇る巨大金融グループだ。

そして同行が生き残りをかけてデンマークのDanske Bankとの合併を模索していると9月24日にDagens Industriが報じている。

両行はこれまでにも協力関係にあリ、合併相手としては最も波長のあった関係にある。

しかし、ここにきてSwedbankの株価が急落していることで実際に合併話があったとしても白紙に戻らざるえなくなっていてもおかしくなくなっている。

ロンドンのシティやニューヨークのマンハッタンのように北欧の金融地としてそのポジションを確立しているストックホルム証券取引所では、23日、株価は急落し、金融株は軒並売り一辺倒の投げ売り市場となり、特にその中でもSwedbankはその筆頭になっていた。

そして9月29日には、同行株は他欧州の次の破綻候補金融株同様に実に-18%も下落してしまい、株価は1年前の株価215SEKからも半値以下の82.5SEKにまで下落してしまった。

*1SEKは約15円

株価の下落は30日にも止まらず、一時株価は75.25SEKにまで下落した。9月22日の時点で最高値112.5SEKあったことからもこの間だけでも-43%も下落したことになる。

07年2月に285SEKをつけていた頃と比べると、実に株価は4分の1にまでその価値をなくしたことになる。

9月30日の株価だけをみると、Swedbankだけではなく、SEBも-12%、Nordeaも約-6%、Danskeも-6%という散々たる成績であった。


前編おわり


後編:バルトの金融

バルト3国で最大のシェアを誇るSwedbank。

バルト3国でSwedbankというと何処の銀行か思いつかない人もいるかもしれないが、少し前に銀行名をSwedbankに変えてしまったが旧ハンサバンク(Hansabank)である。

ハンサバンクはエストニアの成長の証のような銀行であったし、エストニアだけではなくラトビア、リトアニアにでも大きなシェアを獲得していた。

エストニアとロシアとの関係が悪化する前まではロシアでも知名度共にシェアを拡大する最中にあった。

大きく北欧金融に左右されるバルト3国の金融業界であるが為に、本国の金融政策に大きな影響を受けてしまう。

これがバルト3国金融の宿命なのかもしれない。

今回の金融危機への懸念からエストニア金融監督局は、早々にエストニアも危機管理の強化を図ることに言及している。

そして、当事者となる周辺各国の金融局と財務省、そして中央銀行が集まって危機管理について9月末に話し合いが持たれている。

この話会いではバルト3国と北欧が協力して危機管理を計ることを盛り込んでおり、各国政府、中央銀行などが率先してより積極的にそれぞれの国を管理監督することが謳われている。

この決定は、ユンケル・ユーログループ議長が『EU各国政府は、金融危機によって大手銀行を破たんさせない』と述べていることに繋がっている。

アメリカでは最後まで国民の血税の導入に反対意見が大勢を占めたが、欧州では比較的金融機関の国有化には反対意見は少ない。そういう意味でも各国は最悪、国内で活動する金融機関をいつでも各国と強調し合いながら国有化を計ることになるだろう。

ただし、一部ではアメリカ同様に国家の介入には反対との声もあることから、早々の閣議決定にせよ、議会を通した法律改正にせよ準備を怠らないようにしなくてはならない。

エストニア当局では、万が一、銀行グループの親会社が問題に直面してしまったとしてもハンサバンク(現Swedbank)にせよSEBにせよ、国内ではそれぞれ子会社であって、独立法人であることから直接的に問題に直面するわけではないとして両行の危機説の火消しに必死になっている。

Swedbankの危機説に過敏に反応を見せるリトアニアでは、当地メディアが同行へ直接危機説の確認を行っている。

Swedbankからは同行では十分な資本を有しており、この金融危機にも何ら問題を有しないと回答を受けている。同様にスウェーデンの金融当局も国内の金融機関がただちに何らかの危機に直面するようなことは感知してないといい、この金融危機説はあくまでも根拠のない市場の噂がベースとなって株価が売られていると見ている。

それでも金融システム危機の懸念を払拭する為にスウェーデン政府も預金者保護としてペイオフを25万SEK(約375万円)にまで引き上げている。

世界的なペイオフ水準と比べるとかなり低い額だが、見方によれば、それ程この金融危機に直面してもいないとも解釈出来なくもない。

このペイオフ額がそのままバルト3国にも適応されるか否かはどこにも明記はされていないが、現状の法律では少なくともこの額以上には貯金保護は受けられないのは確かなので、バルト3国の金融機関へはあまり多くの預貯金を置くのは一旦、避けておいた方が得策かもしれない。




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