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07年1月1日からブルガリア、ルーマニアがEU加盟を果たすことが決まり、巨大化する欧州・中東欧に続き、巨大市場として台頭しつつあるロシア、GDP成長率が10%を上回るバルト3国、国営企業の民営化を急ぐCIS諸国といった地域の経済状況などの情報を配信しています。

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月刊バルトジャーナル 多事争論Vol.005

 

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★多事争論 前編
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ま何度かバルトジャーナルでも報じたことがある「タリシンキ」構想。

ここでまた新たな構想が草案されている!

タリシンキとは、タリン(エストニア)とヘルシンキ(フィンランド)を一つの都市として見做し、国は違えども、1つの自治体が管理するという構想だ。

エストニアは、経済も北欧経済圏と言われるほど、フィンランド、スウェーデンとの関わりが強い。

そこで生まれたのがこの構想なんだが、いつも案ばかりで現実性が問われる話題でもあった。

そこに今度は、フィンランド湾の中間に人口2万人程度の人工島を作り、そこをこのタリシンキ構想の要にしようというのだ!

タリシンキ構想には、両都市を繋げる鉄道と道路を兼ね備えた2層式橋か海底トンネルの建設が練られてきた。

今回の構想は、この海底トンネルを建設することをベースに考えられたものだが、例え2層式橋となった場合でもこの人工島の建設は可能だという。

建築家のMartti Kalliala氏が、この不況下、建設資材は余っており、中間に花崗岩で固めた人工島を建設するのに十分な資材はフィンランド国内にあるという。

同氏案では、建設費用は、建設許可を販売し、同時にでき上がった埋立地を1平米6200クローン(約5万1500円)で売りに出し、94億クローン(約780億2000万円)を捻出すれば人工島は建設できるという。

建設案にはマンションの他、サマーコテージ、ピラミッド型のオフィスビル、学校、公園、水泳ビーチ、小港、コンフェレンスセンター、風力発電所などが記されている。

同案の元は、実はドバイの人工島から受けたアイデアらしく、現在ヘルシンキ市計画局が開催している展覧会で『Helsinki- Eurooppalainen metropolis』として5月15日まで公開している。

そしてタリン側の玄関口になるかもしれないタリン港のシティーホールの再建が漸く現実的なものとなりそうだ。

大富豪で化粧品メーカーの創業者として誰もが知るエスティ・ローダーの子息であるロナルド・ローダー(Ronald Lauder)がシティーホールの再建に乗り出すという。

ローダー一族であるロナルド・ローダー氏は、アメリカの駐オーストリア大使でもあり、イスラエルでテレビ局なども経営している。

最終的な契約にはまだ至ってはいないが、合意には達しており、この計画が進めば、同地にいろいろな施設を兼ね備えた複合施設が建設されることになる。

同氏は、07年に共同で当地にTallinn Entertainment LLCという会社を立ち上げており、各種エンターテイメントや文化およびスポーツイベント、そしてホテルなどを営むことを目指してきた。

実際の同社の株主はRSL Capital、GF Capital Management & Advisors、そしてRemi Internationalの3社だが、RSL Capitalはロナルド氏の持ち株会社である。

30億ドル(約3000億円)近い資産を持つとされる同氏の資産を背景に、これでタリンの海の玄関口、シティーホールが生まれ変わることになる。

その他の2社は、GF Capital Management & Advisorsはメディア、通信ソフトなどの企業に投資する投資会社で、Remi Internationalは、エストニア人Roman Pipko氏が大株主の財務コンサル会社となっている。

既にタリン市政府は、当地にシティーホールの他、会議センター、エンターテイメントセンターなどを併設することを決めている。

タリン市には早々に契約の詳細を詰めて本契約を結ぶことを望むばかりだ。

とはいっても、周りを見渡せば、依然、世界は金融危機の真っ只中にいる。

一つ歯車が動けば何事も今件の様に全てが上手い方向へ流れて行きそうなものだが、現在の経済環境下ではなかなかそうは言っていられないのが、現実かもしれない。

実は今、エストニアでは財務大臣の首を切ろうとしている。

地元メディアでは、Ivari Padar財務大臣が明かした財政再建プラン(別名:増税プラン?!)に反対して、同相の首を取る動きがエストニアで活発になっていると報じている。

同相は、いくつもの増税案を発表し、不評を買った形となっている。

実際に辞任に追いかまれるか否かは定かではないが、現在は、もし実際に辞任するようなことになった場合は、首相が兼任する案が最も有力だという。

首相が財務大臣を兼ねるケースは欧州ではマルタ、ルクセンブルグでもあり、特段珍しいことではない。

Ansip首相もこの経済環境下では国庫安定だけを目指した増税案には賛成できないとしており、同案を引っ込めない限り、財務相の辞任は免れないだろう。

そしてその増税案だが、一体、どんなものであったのだろうか?

Ivari Padar財務相は、増税により本年度は55億クローン(約456億5000万円)、来年度では131億クローン(約1087億3000万円)の増収を狙ったという。

増税案は全部で15項目ある。

1.第1子及び第2子への所得免除を停止
これにより2011年には11億クローン(約91億3000万円)が節約化

2.所得税を、現在の21%から26%に引き上げる
これにより本年度は17億6000クローン(約146億800万円)、来年度で36億クローン(約298億8000万円)の増収

3.月収4万クローン(約33万2000円)以上の所得者には所得税30%を課税
これにより本年度7500万クローン(約6億2250万円)、来年度で1億4000万クローン(約11億6200万円)の増収

4.固定資産税の増税
不動産ブーム時に同税の見直しをしておらず、増税により2010年には5億クローン(約41億5000万円)の増収を実現

5.CO2排出量に応じた自動車税の導入
これにより本年度は5億クローン(約41億5000万円)、来年度で10億クローン(約83億円)の増収

6.失業保険掛け金を4.2%まで引き上げるか、新雇用法を一旦棚上げ

7.国家の支出削減
今年度は10億クローン(約83億円)、来年度では20億クローン(約166億円)の節約

8.酒税及びたばこ税を5%引上げ
酒税で来年度は9500万クローン(約7億8850万円)の増収、そしてたばこ税で本年度3憶3000万クローン(約27億4000万円)の増収、ただし、来年度では2億クローン(約16億6000万円)程度の減収となる

9.政党助成金を7%削減
これにより630万クローン(約5230万円)の節約

10.ディーゼル及び軽ヒーティングオイル課税の免税を農業だけに留める
これにより本年度は1億3000万クローン(約10億7900万円)、来年度で7億8000万クローン(約64億7400万円)の増収

11.賭博税の引上げ
スロットマシーン一台に付き1マンクローンとし、本年度は3000万クローン(約2億4900万円)、来年度で8000万クローン(約6億6400万円)の増収

12.道路メンテナンス経費の削減
これにより本年度は6400万クローン(約5億3120万円)の節約

13.所得税免除の一時凍結
これにより来年度は3億5000万クローン(約29億500万円)の増収

14.国防費をGDPの1.5%まで削減
これにより本年度は5億5100万クローン(約45億7330万円)、来年度で20億クローン(約166億円)の節約

15.住宅ローン金利分の所得税免除の上限の下方修正など
上限は5万クローン(約41万5000円)から3万クローン(約24万9000円)へ引き下げ

政府、政党、企業、個人、すべてに痛みを与えることになる同案へは、政治家自身も反対との姿勢が強く、景気後退下での増税では、それでなくとも所得減を恐れる市民には明らかに耐えがたい内容となっている。

普通、先進国では、経済刺激策を講じ、景気の底抜けを防ぐことを試みるのだが、残念ながらそんな余力はバルト3国にはなく、支出削減と増税でこの国家の存亡を堪忍ぶしかないというのが同相の本音といったところだろう。

あまり暗い話ばかりしても仕方がないので、ここでタリン市が新たに取り組みを発表したアジアからの旅行者倍増計画も紹介しておこう!

タリン旅行協会では、この程、同HPに中国語と日本語を併記することを明らかにしている。

欧州からの旅行者が激減する中、今、最も渡航が多いのはフィンランド及びロシアからだが、隣国フィンランドのフィンランド航空がアジア路線に力を入れていることを踏まえて、『フィンランドまで来たのなら是非タリンまでお出かけ下さい』というPRを100万クローン(約830万円)を投じて始めようということらしい。

現在はロシアからの観光客で何とか旅行業界は持っているといっても過言でないほどロシア人が週末にもなれば至る所で見られる。

一時の犬猿の仲はどうなった?と疑いたくなるような光景だが、実際にはエストニアは、ロシアとは切っても切れない関係にあるのかもしれない。

因みにフィンランド航空は、アジア路線としては、日本へは東京、名古屋、大阪に就航しており、その他にも北京、上海、香港へも直行便を持っている。

昨年は2万人近い中国人旅行者がヘルシンキを訪れており、この何割かがタリンに来るだけでも相当の経済効果があると期待されている。

後編へつづく
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★多事争論 後編
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今、世界では金融危機に留まらず、新型インフルエンザ(旧豚インフルエンザ)が世界的な大流行(パンデミック)になる危険があるとして、各国とも必死に国内に入らないように航空機では機内検疫などで対応しようとしている。

風評被害を懸念して当初の豚インフルエンザという名前の変更も行われたが、確かに豚肉を食べたらうつるとか勘違いしている人も多いという。

日本のメディアでは世界16カ国で感染及び2次感染が確認され、疑惑のある患者報告があった国なども紹介されているが、実はバルト3国ではリトアニアでも疑いのある患者が存在していた。

リトアニアの保健当局ではすでに国内初の感染疑惑患者の検体チェックとしてロンドンの感染症研究施設で検体検査していることを明かしている。

あるリトアニア市民がメキシコ旅行から4月23日に戻ってきたところ、A型インフルエンザの感染が確認されたといい、その確認作業を現在進めているということだ。

この患者は、世界のメディアが25日に新型インフルエンザを報じたのを見て、28日、メキシコから帰国したこととインフルエンザの症状があるということで検査を受けにきた。

そして、国内の研究施設では新型ウイルスの確認は出来ず、検体を持っているロンドンへ送られたという。

一度は、家族も含めてパニック報道になりかけたが、新型の芽が薄れたとの報道で、報道自体も下火になっている。

とはいっても、日本でも結局、新型インフルエンザではなく、既存のインフルエンザであったり、他国でも既に大半が回復しているというように、この患者も既に回復に向かっているといい、心配無用ということらしい。

さて、本題に入るが、今、バルト3国では景気後退スパイラルに陥ろうとしていると英誌エコノミストが伝えている。

バルトの虎と呼ばれ一時は欧州のGDP成長率の牽引役とも評されたエストニア、ラトビア、リトアニアの3カ国が、今では、中東欧の中でも最も経済が瀕死状態にあるとして国家破綻も含め、大変危惧されている。

ラトビアは昨冬、IMFなどから1兆円に上る経済支援を受けることを纏めたが、GDPは−10%(09年第1四半期)超えるマイナス成長となり、この傾向はバルト3国全体の傾向となっている。

下記していくが、経済刺激策や通貨切り下げが必要とされる中でも、実際の所、自国通貨をユーロとペッグさせていることで、取れる手段も限られ、身動きが取れずに3国共苦しんでいる。

バルト3国市民のその殆どがユーロ建てのローンを組んでいる為、今通貨切り下げを行えば、一気に国民の借金は莫大に増加し、生活が二進も三進も行かなくなるとの懸念から通貨切り下げはあり得ないというのがもっぱらの見方になっている。

自国通貨高では、輸出競争力も上がらず、給与を激減させるわけにもいかず、企業としても袋小路に完全に嵌ってしまっている。

何が何でもユーロ導入を図る為にはという思いから、経済刺激策は全くと言っていいほど着手できないでいる。

これが現状だろう。

バルト3国の中でもエストニアは唯一、経済ブーム中、財政黒字にあり、余力はあるのだが、ユーロ導入には財政赤字をGDPの3%以下に留めなくてはならないという規定がある為に財政出動はできないというのが実情だ。

バルト3国は今すぐにでもユーロ導入を図りたいというのが正直な本音だろう。

しかし、07年の導入機会を逸した今、当時のインフレ問題ではなく、今度は財政赤字問題が導入ハードルを高くしてしまっている。

現在、ユーロ導入チャンスが最も薄いとされるラトビアでは、IMFから財政赤字幅をGDPの5%以下に留めることを財政支援の条件とされている。

しかしながら、これまでの所その条件をクリアできておらず、このままでは支援体制は纏まっていても実際のお金が入って来ないという最悪の事態に陥る危険性が高まっている。

赤字幅を7%まで広げることをIMFに願い出ているラトビアであるが、それもなかなか受け入れてもらえないというのが今置かれている現実のようだ。

英紙FTでもバルト3国が通貨切り下げを否定し続ける限り、この苦境を乗越えることは難しいと伝えている。

ペッグ制を採っている限り、変動幅は固定もしくは極めて小さい範囲に限られており、通貨が弱含んでいる他の諸国と比べて、明らかに経済に競争力が失われている。

自国通貨高を演出している状態にあり、リトアニアでは隣国のポーランドへお買い物に行くというのがちょっとしたブームになっている。

預貯金や所得が多ければ、それはそれで喜ばしい話だが、預金もなく、所得も大した事もなく、更に借金漬けともなれば、ショッピングに現を抜かしている時ではない。

英紙では、アメリカ、イギリス、ドイツなどが経済不況に苦しむ最中、バルト地域の小さな国々がどれ程の影響を受けるかは想像を超えていると紹介している。

とはいっても、今、置かれている状況を大きく変えるには、これらの国では自助努力だけでは乗り切れないだろう。

IMFでも少し前にEUに対し、ユーロ導入基準を緩和するという提案を出している。

欧州中央銀行(ECB)の理事会の議席を持たない準加盟国としてユーロを導入できるよう基準の緩和を求めたものだが、EUもECBも同案を否定している。

バルト3国が抱える債務の過半数はユーロ建てだ。

これが一番の難題となっている。

今、自国通貨のままで通貨切り下げを行えば、現世代だけでは一生かかっても支払えないかもしれない。

ラトビアの1兆円の借金にしても、これは現在の為替での計算に過ぎず、一旦、ラッツを切り下げれば、膨大の金額(借金)に上ってしまう。

ECBが頑な態度をとる背景は、まだユーロは誕生して10年しか過ぎておらず、この時点で導入基準を緩和してしまい、根幹を痛めてしまえば、その存在そのものに亀裂が入り兼ねないとして慎重な姿勢を貫いている。

現在、ユーロ導入に最も近いとされるエストニアにとって唯一の援軍となっているのが、格付け会社かもしれない。

大手格付け会社米S&P社が4月の見直し作業でエストニアのソブリンを据え置いた。

ラトビアやリトアニアが引き下げられたのとは違い、必死に財政赤字の拡大を耐え忍んでいるエストニアの政策を評価し、現状維持にしたということだ。

同社は、エストニアの長期をA、そして短期でもA-1と据え置き評価した。

同時に要注意リストからもエストニアを外している。

ただし、見通しについては、ネガティブのまま据え置かれている。

エストニアへの評価は、政府が進める財政カット案(GDPの4.6%分の赤字削減)が受け入れられている証拠とも言え、財政バランスが固持され続けている現状を高評価したものとなっている。

そして、ソブリンが高く評価されてる限り、もしエストニアが国債を発行しても十分に買い手が見つかり、資金繰りにはそれ程難はないということになる。

ラトビアのソブリンは長期BB+、短期B、そしてリトアニアのそれはBBBとA-3となっている。

共に見通しはネガティブだ。

つまり、この2カ国は、この世界的な経済不況の中、もし資金調達を必要としたとすれば、これまで以上の悪条件で借入を行わなければならなくなる。

しかしながら、エストニアでも今秋から銀行の融資焦げ付きが拡大すると懸念されている。

この7月から施行される新雇用法の影響を受け、従業員の解雇が容易になることも手伝って失業者が急増し、至ってはローンの返済に困窮し、最後はローンが焦げ付くというものだ。

これまで企業では受注が激減しても無給休暇を取るよう従業員に求め、雇用の確保を維持してきた。

しかし、すでにそんな方法にも限界が見えてきている。

国内の商業銀行の融資焦げ付きは、2か月以上の滞納にあるものは、この3月末までで融資総額の4.5%にまで激増している。

建設業などの不動産関係業界に限ってみると、8%近い水準にまで上がっており、この悪化はこれからが本番となる。

住宅ローンだけを見ても焦付き率は全体の3%に達している。

今秋を過ぎたあたりから、更に悪化していけば、銀行としても引当金を十分に充当せねばならなくなるだろう。

つまり、経済ブームを煽る格好となったスウェーデン系銀行の融資拡大政策により生じた不動産バブルの崩壊の付けはやはりスウェーデン系の銀行が負うことになることは間違いない。

となると、バルト3国では、エストニアに限らず銀行シェアの多くを寡占するスウェーデンの銀行の対応如何で当地域の未来が左右されかねないということになる。

バルト3国で莫大な利益を享受したSwedbankとSEBの2行は、今後、どうバルト3国の融資焦げ付きを処理していくのだろうか?

Swedbankでは、昨年ローン市場の実に17%のシェアを誇っている。収益も25%を占め、ライバルのSEBの13%と12%をそれぞれ大きく上回っている。  

2行を合わせると、融資シェアは30%、収益では37%ということになる。

シェアが高いということは、つまり、それだけ焦げ付けば、損失も広がるということの裏返しとなる。

国際決済銀行(Bank of International Settlements)の予測では、スウェーデン系の銀行のバルト3国における損失は800億ドル(約8兆円)に上ると試算している。

この規模は、スウェーデンのGDPの実に16%相当にあたる。

Swedbankの融資の焦げ付きは、自国の規模よりもバルト3国からの規模の方が上回っており、この第1四半期の決算資料では、この10年間で初となる4億700万ドル(約407億円)の赤字を計上してしまった。

不動産バブルは弾け、消費ブームも終焉し、欧州、ロシアへの輸出も衰退する中にあるバルト3国では、今年GDPは10%を超えるマイナスとなり、経済の回復も2011年以降になると予測されている。

そしてバルト3国やCIS諸国でシェアを伸ばしたスウェーデンの銀行の苦境はこれからだとされ、銀行株は急落中である。

格付け会社ムーディーズではSEBの格付けをA1とし、英フィッチではSwedbankをAとしている。

Swedbankでは、借入保障をすでにスウェーデン政府から得ており、SEBでもその申請を考慮中であるという。

自行だけの努力では、資金調達が懸念される恐れがあるとして、両行では、懸念される前に処方箋を得ようということだ。

ただし、いくらスウェーデン政府から融資保証を得ているからといっても、例えば、一旦、ラトビアが破たんの危機に瀕し、ペッグを維持できなくなったとすれば、それをどこまで補うことができるかは明らかに不透明だと言えるだろう。

ラトビアの風邪は必ずリトアニア、そしてエストニアに拡がる。

その時、スウェーデンの銀行本体、そしてスウェーデン政府はどこまで本気で介入してくるのだろう。

現在の所、両行とも十分な銀行資本を有している。

そして両行の資本比率は、Swedbankで10.8%、SEBで12.1%と非常に高い水準を維持している。

現状だけを見れば、安心して見ていられるが、もしまた何か巨大企業の破綻や国家の破綻などが連鎖するようなことが起きれば、これらの資本もあっという間に吹き飛んでしまうだろう。

恐らくこれらの銀行やスウェーデン政府は、バルト3国以上にバルト3国のユーロ導入を望んでいるのかもしれない。

今の状況では、ユーロ導入に最も近いのがエストニアだ。

エストニアは2011年の導入を目指し、リトアニアは2012年を目指している。

ラトビアは2013年と言っているが、今の状況ではこれもとても難しいと言わざる得ないだろう。

結局、バルト3国を経済危機から救うには、ユーロ導入基準の緩和しかないのかもしれない。

さもなければ、各国とも国家破綻の危機と背中合わせのまま、この苦境を引きずって2011年〜2013年を迎えなければならなくなるだろう。




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