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07年1月1日からブルガリア、ルーマニアがEU加盟を果たすことが決まり、巨大化する欧州・中東欧に続き、巨大市場として台頭しつつあるロシア、GDP成長率が10%を上回るバルト3国、国営企業の民営化を急ぐCIS諸国といった地域の経済状況などの情報を配信しています。

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トップ > 週刊バルトジャーナル89号から
欧州連合,エストニアに何を学ぶか

欧州連合加盟以後も経済発展は順調に軌道に乗り、市民の国家への安心感や生活水準の向上も同時にEU加盟を果たしたどの国よりもしっかりと馴染んでいるエストニア。そんなエストニアを支えるのは主要産業である林業、鉱山業、農業などではなく、やはり人であることがこの国に足を踏み入れると明らかである。

商取引の自由度、為替取引の自由化など、何をとっても世界のどの先進国と対比しても恥ずかしくない制度を既に持ち合わせている。

エストニアのどの地域に住む市民も、自由に売りたいものを販売し、富を増やしつつある。

エストニアは、旧ソ連から自由を勝ち取り、今、欧州連合に加盟を果たした。市民は将来の夢を高く抱き、既存のEU加盟国の生活水準にいかに早く追いつくかを最大の目標として経済発展に日々努力を続けている。しかし、ここに一つ最大の懸念材料が潜んでいることを見落としてはいけない。

丁度20年位前のイギリスが直面した問題をエストニアはよく分析する必要がある。欧州連合委員会は官僚制度の破壊、内政干渉そして監督などといった既得権を放棄することを最も懸念していた。

イギリスが断行した多くの規制緩和を恐れた欧州連合各国は規制緩和がもたらす多くの変化が国家存続、繁栄に逆行するかのような疑念をイギリスの変革に感じ取っていた。

実際、同委員会は、特異な税制を誇示するエストニアに対して弱いものいじめをするかのような要求を今、叩き付けている。EUは、エストニアの税制をより高い税率にまで引き上げるか、計上した収益を欧州の税率の高い国々へ再投資させることを強要するように制度変更を求めている。

欧州連合各国が最も懸念するのは、各国企業がより規制緩和が進んだエストニアへ税制メリットを求め本社移転し、資本流出が加速することを最も嫌っている。小国であるエストニアは今、大国のイギリスと共同路線を踏むことでその存続を試されるときに既に来ている。

同委員会は現在、欧州連合各国へ新たな取り組みを強要しようとしている。加盟国は化学物質を使った薬品、医薬品、食料品などを制約する議定書を提案しており、同議定書には、加盟国は人体に影響を及ぼすと考えられる化学物質の利用は一切許可しないという内容となっており、健康や安全性などの点から見ると妥当な発案であることは確かではあるが、経済が未熟な新規EU加盟諸国にとっては過剰な支出を伴うことになり経済発展に支障を及ぼしかねないとこれらの動きに懸念を表明している。

欧州連合委員会の動きは、彼らの言葉を借りれば、民主化、均一化などとなるが、経済に余裕のあるフランス、ドイツなどの大国はまだしも、EU加盟諸国中最も経済規模が小さいバルト3国や中東欧の大国ポーランド、チェコ、ハンガリーといった諸国でさえ、まだまだ既存加盟国経済規模には程遠く、既存加盟諸国による新規加盟諸国への経済制裁としか捉えかねない現実がある。

確かに多くの規制緩和を進めようとするEUの取り組みは統一理念といった観点からすると正しいはずなのだが、一部の制度は大国のわがままにも映り、あくまでも大国のメリット優先にしか過ぎず、小国の経済成長をサポートする何らかな手を如何に講ずるかが今後の焦点となるだろう。

ヘリテージ財団と米ウォールストリートジャーナルが共同で行っている各国の経済自由度調査では、エストニアはその自由度、そして自由化政策が大変高く評価を受けている。欧州連合各国は、急速に高度経済への道を歩むエストニアをEUといった枠だけの世界で囲い、自由という羽をもぎ取ってしまうのか、シンガポールや香港といった世界でも自由度が最も高い諸国、地域と対等に競合する国家の誕生を即すのか、EUの存在定義を改めて考えるときにきているのかもしれない。

エストニアが旧ソ連から開放された後、国家繁栄を求めて導入した定率税制。この新しいアイデアを他の多くの国で取り入れられることが新たなムーブメントになる日もあるかもしれない。将来的に10%の定率となった場合でもこの国は間違いなく繁栄を続けるだろう。

現在、エストニア、そして首都タリンは多くの西欧投資家から注目を浴びている。外国からの投資増加による国家繁栄は確かに最大の目的かもしれないが、生活に幸せをただただ求めるエストニア市民の本来の願いからは若干の乖離があるかもしれない。一度この国を訪れると二度と離れたくない気分させるこの雰囲気、それが恐らく投資の最大の理由ではないだろうか。恐らくそれはこの国の国民性から醸し出されるものなのだろう。

自由そして繁栄。エストニアの素晴らしさは繁栄を果たした多くの小国が同じであるように、経済の自由度を高め、また新たな変化には果敢に取り組むその姿勢にあるのではないだろうか。


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