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トップ > 週刊バルトジャーナル113号から
暗黒の木曜日、バルト3国を襲った株価急落

 

エストニアを中心に2月8日から9日午前中にかけて証券市場を震撼させる大地震が発生した。8日エストニア証券市場は5.8%の下落を経験した。2000年以降では2000年5月17日以来となる大きな株価調整となった。

タリンOMXインデックスは前日の1042.95を付けるまで長らく上昇を続けてきた。去年最も株価が下落したのは06年5月まで遡り、その時は3日間かけて3.33%株価は値を落としている。当時の株価は608.29であった。

タリン証券市場は06年1月1日から07年2月9日までの間に49.58%も値上がりしている。ただし、これが2月7日までであれば57.05%と如何に大量の資金が流れ込んでいたかが分かる。特に6月末の底値589.21からは脅威の77.01%の上昇だ。

丁度1月末に中国でも株価調整があった。中国株も去年は脅威の値上がりを記録し中央政府も懸念していた。中国株は数年続いた下落トレンドが昨年は年初から上昇気流に乗ってこれまでの下落分を一気に帳消しにしている。

この中国株の下落を多くの市場関係者がここエストニアでも実は懸念していた。極端な上昇は必ず調整が入り、一度は値を落とさないと再度の上昇エネルギーは生まれない。

これは証券市場に限った話ではなく投資対象となるものは必ず経なければ次のチャンスへと繋がらない。

今回のエストニア証券市場を覆った株価下落の波はラトビア、リトアニアへと繋がっていく。ただし、もともとラトビアは他2カ国とあまり連携した株価の動きがないことからそれ程の下落にはならなかった。

実際、8日は0.25%の下落に留まり、9日に1.43%と下落幅を膨らましたに留まっている。9日はインデックスは下げているが、各株価は値上がり株数、値下がり株数には差ほど変わりない。全面安となったエストニアとは傾向が違った。

一方でエストニアと似た株価の動きをするリトアニアでは、8日に1.52%の下落があり、9日には0.59%の値上がりで終わった。9日のエストニア市場自身は1%上昇して取引を終えている。

8日に大きく株価を落としたエストニアとリトアニアだが、エストニアでは一時期パニック売りとも取れる9%を超える値下がりを過半数の株で経験した。一時期最大の値下がりを記録した建設会社Merkoでは13.39%の値下がりがあり、9日の寄付きでは水会社Tallina Vesiが14.7%の下落を演じている。

8日の取引では全株で下落し、平均でも5%を超える株価下落となった。

年初からの2割3割アップといった株価から一部の投資家らは極端に値上がりした株価に嫌気して一気に株価は値を崩していった。

8日に下落が激しかったMerkoは7日の25.5ユーロからこの日最大21.6ユーロまで下げている。それでも1月中旬頃の値までしか落としておらず、Talliina Vesiでも9日の寄り付きで15.5ユーロまで下がり、年初の15ユーロに近づいたが、結局18.16ユーロで取引が終わり、一旦パニック売りが落ち着くと、冷静に見ていた投資家らが市場に戻ってきたことで取引は安定していった。

因みにエストニア市場で今回の暗黒の木曜日で最も興味を引いたのはチョコ&キャンディメーカーのKalevだ。大半の株が精々値下がりしても1月中旬頃の株価にまでしか下がらなかった一方で、Kalevだけは違っていた。Kalev株は一時期1.26ユーロまで下がり、これはなんと06年4月1日の株価まで遡らなければ過去データが見つからない価格で取引された。9日の終値は結局は1.49ユーロで終わり、この所の平均取引価格で落ち着いている。

ラトビアの株式市場では8日、9日と大きな変動はなかった。しかしながら、実はエストニアで大規模な株価調整が起こる変調はラトビアとリトアニアで6日辺りから出始めていた。

ラトビアの中堅銀行Latvijas Krajbankaが6日過去最高となる8.1ラトを付けた。ここは1月初値が4.8ラトであったので約68.7%も値上がりしていた。この株が一旦最高値を付けた後、急激に値を下げ始めた。7日に入ると一気に株価は6.86まで下げ、この時点で最高値からは18%の下落を演じている。そして8日は安定した動きを見せた後、9日午前中にエストニアのパニック売りに影響を受け、一時期6.1ラトまで値を落としてしまった。この段階では最高値からは約32.8%の値下がりだ。しかしながら急落直後から押し目買いが入り最後は7ラトまで値を戻している。

ではこの銀行が下落するほどの財務内容が悪化しているかといえば、全く違う。丁度7日に06年度の決算内容を発表し、40%を超える増収増益を達成している。

ラトビアで殆ど値崩れせず、逆に8日値を上げたのはVentspils naftaで親会社は昨年10月に34.5%の株式を取得したオランダのVitol Groupだ。5日の週初めから徐々に値を上げ、週初の2.45ラトから8日には2.66ラトまで値上がり、
9日には2.6ラトで取引を終えている。

リトアニアに関しては、中堅で業績好調のUkio Bankasが大きく株価を変動させた。同行は年初に3.91リタスで初値がつき、6日に4.96リタスと過去最高を記録した。この間の値上がりは約26.8%で昨年の株式分割後最安値からは実に310%の上昇となっている。

同行株も7日に入り一時期4.76リタスまで値を下げ、8日に突入している。8日は何度か4.5リタスを記録し、9日には寄り付きで4.35リタスまで値を下げた。結局9日の終値は4.63リタスまで戻している。因みに同行の06年度収益は117%の
増加を達成している。

同様にSnoras bankasもUkio Bankasとほぼ同様の値下がりし、あまり値を崩さなかったのが今注目されているTEO LTであった。株価はほぼ3リタスを前後し、暗黙の木曜日以前と差ほど変わらぬ水準を維持した。同社株人気は、毎年出される配当が高いことにある。今年は0.27リタスの配当が予定され、株価の9%が配当されるといった高配当企業だ。

ラトビア、リトアニアでは6日から既に変調が始まっていた。リトアニアでは1月中旬から絶えず株価に対する警戒を投資家へ発してきた。あまりにも突然大量の資金が流入したことで決算内容が悪い企業にまで株価上昇が起こり、いつ大規模な株価調整があってもおかしくなかった。ただし、市場からの警戒発信で既に1度株価調整があったリトアニアの株式市場はエストニアほどの下落は経験せずに済ますことに成功した。

エストニアでは誰しも好景気に沸き、所得増と不動産の値上がりなどで警戒心を忘れた投資家らがいつババを引くかを危惧しながらもゲームを長らく続けてしまった結果、大規模な株価調整が起こってしまった。

株価調整が他の投資行動の良い警鐘になれば、今後も安定した成長が期待できるだろう。

漸く訪れた株価調整なので、これからは改めて上昇圧力が高まるだろう。


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