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07年1月1日からブルガリア、ルーマニアがEU加盟を果たすことが決まり、巨大化する欧州・中東欧に続き、巨大市場として台頭しつつあるロシア、GDP成長率が10%を上回るバルト3国、国営企業の民営化を急ぐCIS諸国といった地域の経済状況などの情報を配信しています。

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トップ > 週刊バルトジャーナル124号から
まとめ〜2007年度以降のバルト3国経済見通し!〜

 

週刊バルトジャーナルVol.119から122号まで続いたバルト3国の経済分析も今回の『07年度経済見通し』で最終章となる。

これまでに取り上げてきた『悲鳴を上げるバルト3国〜ハードランディング懸念も〜』『軟着陸かエストニア経済?!』『今後の経済成長は原発問題が鍵!〜リトアニア〜』『待ったなし、ラトビアは上手く経済危機を回避できるか?!』の4つを読めば、バルト3国経済の現状は容易に把握できるだろう。

2006年度のバルト3国経済は、3国、どこの国の経済を見ても過去最高の成長を達成した。特にエストニア、ラトビアの2カ国は、それぞれ11.4%、11.9%の経済成長を記録し、リトアニアも7.5%成長とEU諸国のどの国と比較しても胸を張れる経済成長を達成した。

バルト3国の経済成長は、どの国も国内需要が支えた格好で達成され、世帯支出及び投資の拡大などを代表とする強い国内消費が支えてきた。

世帯支出の拡大は、雇用の安定、拡大による世帯収入の増加により齎され、同時に巨大な借り入れも創生してしまった。

投資も所得増から投資機会が容易となったことから、市民の不動産、株などへの投資への裾野が広がった。

好景気を背景に、人材不足は危機的状態にまで悪化し、国内からは十分な人材確保が出来ないことで、人件費拡大が企業収益を圧迫し始めている。

現状で最も懸念される経済環境の変化は、金利の上昇と輸出力逓減による企業収支の悪化、そしてEU加盟以前から決定していた今後始まるEUからの支援資金という巨大な資金流入等が挙げられる。経済発展のためには、EU資金は不可欠であるが、高インフレに苦しむ現状では、一層のインフレ圧力を生み出しかねない状況にある。

格付け会社各社がバルト3国経済への危惧を示唆し始めた2月以降も経済動向は、実際の所、2006年度上半期とそう大差ない。各国政府は、インフレ抑制政策の導入に取り掛かってはいるものの、まだその効果を見るにまでは至っていない。

各国政府が依然、真剣に取り組んでいない問題に労働者不足がある。06年度の賃金上昇率は11〜15.5%の間で推移したが、今年も極端な人材不足から、この状況を打破することは難しいだろう。

人件費の高騰、生産性の低下、競争力の低下などが絡み合い、輸出高を大きく逓減させてしまうと見られている。

そして海外からの大量の資金流入による国家収支の悪化が経済懸念を増長させている。各国の経常赤字は、エストニアでGDPの12.3%、ラトビア19.9%、リトアニア9.7%などとなっている。

海外からの資金は、形を変え、不動産市場に流入したことで建設コストや不動産価格上昇圧力となり、廻りまわって高いインフレを生み出してしまった。

因みに07年3月期の消費者物価指数は、エストニア5.7%、ラトビア8.5%、リトアニア4.6%とユーロ加盟基準には程遠い指数となっている。

ハンサバンクの経済見通しでも、市民等の過剰な借り入れと不動産市場を中心とした過剰な価格高騰が今後大きく変化していくことへの懸念を示している。

バルト3国の中でも最も経済懸念が持たれたラトビアでは、インフレ抑制政策を早々に実施させたが、実際の効果は未だに見ることはできない状態にある。S&Pを代表とする格付け会社等は、最近でもラトビア経済の見通しを引き下げており、より強力な経済政策の施策を求めている。

昨年末からラトビアの経済動向も安定し始めてはいるが、依然バルト3国中では最大の懸念対象国となっている。エストニアとリトアニアに関しては、既に2006年度のような極端な高経済成長は見られず、8%前後の安定成長が予測されている。

エストニアでは、06年下半期には借入残高も落ち着きを見せ、不動産市場も大きな価格調整もなく、現状を維持している。若干の懸念は、労働者不足と賃金の高騰だろう。政府も予算政策を厳しくしていることもあり、上手くこの難局は回避できると見られている。

3国中、最も懸念が少ないのはリトアニアだ。しかしながら、大小は別として、リトアニアもエストニア、ラトビア同様の問題を抱えていることには変わりなく、早々に次の一手を打つことが安定した経済成長を持続させることに有効となるだろう。

ラトビアが導入したインフレ対策だが、まだまだその効果を感じるまでには至ってはいない。しかしながら、ラトビア政府は、格付け会社が指摘する前となる2006年末には既に素案の着手に入っており、急激な経済成長と国内消費の安定化を模索してきている。

つまり外部が言う程、政府が機能していない訳ではないのだ。

しかしながら、その政府の動きが悪いとして、投機筋は通貨ラトへのアタックを繰り返している。アジアの通貨危機を思い起こすが、これも中央銀行の度重なる介入により、上手く回避させている。

実際の所、ラトの見直しが成されたとしても何の問題解決にはならず、より多くの問題を生み出すだけとなる。

兎に角、早く労働不足問題を解決させ、不当な賃金上昇への解決策を模索することが先決だろう。

企業も国内では給与の他、社宅、ボーナスなどの雇用条件の引上げを何度も繰り返してきたが、これ以上の好条件を出すことも出来ないところにまで追いやられており、残されるのは、外国から労働者を雇い入れるくらいしか問題解決が出来ないところまで来ている。

では、今後の経済見通しだが、実際の所、経済のソフトランディングは上手く行くのかどうかが焦点となる。

エストニアとラトビアについては、2つの可能性を提言出来るだろう。つまり、ソフトランディングかハードランディングの二つに一つだ。

現状からすると、限りなくソフトランディングになる可能性が高い。ただし、今後も政府が収支バランスを取ることと、市民等の過剰な借入れが減少することが条件となる。

リトアニアについては、上手く経済を持続成長させることに成功させるだろう。失業率は好景気を背景に国民皆就労という状態にはあるが、経済成長は07年度7%、08年度6%が予測されている。

ラトビアの経済成長は、07年度が上半期が06年度の流れを引き継いでおり、9%と高い成長率が予測されている。08年〜09年も7%近い成長が続くと見られている。上手くインフレ対策が機能することが期待されることもあり、08年度のインフレ率は5.5%まで下がると見られている。しかし、07年度は8%の高インフレに留まるだろう。

政府が打ち出した銀行による貸し出し(融資)ポリシーの見直しが上手く今年下半期から機能することになれば、融資残高は安定し、賃金の上昇も落ち着き、輸入も減少する事になるだろう。

あくまでも期待先行だが、09年にはラトビアの経常赤字はGDPの11.6%程度まで改善するだろう。

そしてエストニアだが、実際にソフトランディングとなる公算が徐々に拡がっている。というのも、企業収益も06年第4四半期をピークに減少し始めており、賃金上昇への抑制圧力となりつつある。一方で、今春には、昨年の好収益を背景に企業各社では、高いボーナスを出している。

今春の段階では、今年の経済成長は8.6%程度とされ、09年には6.6%成長と予測されている。インフレ率は今年4.9%、08年5.2%が予測される。

賃金上昇は、労働力不足から上昇圧力となるという見方が一般的だが、企業の収益性の低下と工場の海外移転などの懸念から、上昇圧力は低く抑えられるだろう。

また、4月末の暴動に発したロシアとの関係悪化による経済への影響が徐々に出始めるとの見方からも今後企業等は、無用な支出を削減する方向に経営の舵を切ろうとしている。

これらを踏まえて、バルト3国の経済見通しは、今後は長期的には発展を続けるというのが凡その見立てである。

経済規模も賃金水準も実際には、バルト3国の水準はEU内では最低水準にある。先進国に追いつくためにはまだまだ多くの努力と高い経済成長を持続させていなければならない。

全ての解決方法の根幹は、恐らく人口増を上手く齎す政策の導入となるだろう。労働者不足からの無謀な賃金上昇はなくなり、安定した経済成長が期待できるようになる。

安易な外国人労働者の導入は、社会に無用な問題を増長させてしまうが、自発的に人口増を、それも急激に増やすことは無理なことから、上手い労働者政策を導入することが先ず真っ先に求められる政策の第一歩となるのではないだろうか。


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