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トップ > 週刊バルトジャーナル66号から
欧州ガス供給問題とその側面

ウクライナが露ガスプロムから天然ガス1000立方メートルあたり230ドルで購入することが決まり(実際は95ドル)、これまでの約5倍の取引価格となった合意内容や今冬にロシア産のガス供給の脆弱性が明らかになったことを受けて、今、ヨーロッパ諸国のガス政策が大きく揺れている。

ロシアとウクライナとのガス協議では、政治的な背景があると各メディアが紹介している通り、ロスクレネグロというスイス籍の石油ガス商社の存在が疑問視されている。同社の株主は半分がガスプロムで、残りは依然不明のままだ。西側諸国では不透明な株主への不安を抱いていることから、ウクライナへ再度ロシア側と別の会社を通してガスの供給問題を解決できないかプーチン大統領と交渉を持つように即している。(ウクライナ政府は、残りの株主の名義を確認済み)

今冬、極寒の寒波がロシアやCISそしてヨーロッパ各地を襲い、露産ガスの供給が渋る失態を演じたロシアに対して、西欧諸国では、ガス供給の安定性に関してロシアへのガス依存体質を見直す論議が加熱する一方で、既に建設が始まっているバルトガスパイプライン建設への参加やトルコなどの南東欧諸国でのガス田開発プロジェクトなどのロシアが関与する多くのプロジェクトへの参加問題へは引き続き政策変更がないことを明らかにしている。

ロシア−ウクライナ間のガス協議のほかにも、この冬、中東欧でガス価格が大きく切り上がった背景には、ハンガリーで進められていた石油ガス会社MOL株75%の独E.ONへの売却が欧州委員会に承認されなかったことが大きく影響している。E.ONはMOLの競争入札で最高値を入れたが欧州委員会は、E.ONに対してガスの備蓄施設の買収は許可した一方でガス輸送事業の買収は認めない決定をE.ONへ伝えた。

欧州委員会が買収承認を与えなかった背景は、バルトガスパイプライン建設が大きく絡んでいる。E.ONではロシア−ドイツを結ぶ同パイプライン建設に関係しており、ガス供給の意思決定に強く関与することが出来る。この点を欧州委員会は独禁法の絡みから承認を拒否したと見られている。

露ガスプロムも同じく欧州へのガス供給を独占する狙いがあることは確かで、バルトガスパイプライン建設計画では、近隣諸国との政治的紛争の火種になりかねない陸のパイプラインから海底を通す同パイプライン建設を急ぎ、その他にロシアとトルコを繋ぐブルーストリーム構想に注力していくことを表明している。

ロシアの国策会社であるガスプロムは世界的なガス価格の高騰から露産ガスの高騰メリットを享受しており、周辺国に徐々にその影響力を行使するようになっている。現在、ロシア産のガス価格は約30ドル程度と欧州で取引されるガス価格を大きく下回っているが、世界的なエネルギー不足が予測されることから、価格引き上げカードを切る事でロシアに非協調的な諸国を取り込んでいく政策に取り組み始めている。

参考例としてその一つに、ガスプロムが1998年にブルガリアの国営ガス会社Bulgargazと結んだ1000立方メートルあたり258ドルという価格の見直しを迫るブルガリアに対し、否定的な立場をとる一方で、ロシアがブルガリアへ支払うガスの通行料の引き上げなどの提案には交渉する余地があることを暗に認めている。(現在のガス通行料は1000立方メートルに付き83ドル)

黒海の海底を通すブルーストリーム事業と南東欧のガス供給問題は深く関係することからブルガリア、マケドニア、アルバニアなどが進める3300キロを通すナブコプロジェクト(Nabuko Project)への期待は高まりつつも、巨大資源国家ロシアの存在は到底無視することは出来ず、また、50億ドルといったプロジェクト資金の手当て問題があることからもヨーロッパからの政治及び資金援助を模索せざる得ない袋小路に陥っている。
 


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