05年春到来!
メールマガジン
07年1月1日からブルガリア、ルーマニアがEU加盟を果たすことが決まり、巨大化する欧州・中東欧に続き、巨大市場として台頭しつつあるロシア、GDP成長率が10%を上回るバルト3国、国営企業の民営化を急ぐCIS諸国といった地域の経済状況などの情報を配信しています。

メールアドレス:

→詳しくはこちら


i-modeにて最新経済ニュースをいつでもご覧いただけます。

広告掲載について

トップ > 週刊バルトジャーナル132号から
バイオにかけるバルト3国〜

 

バルト3国にはいくつかのバイオ企業が最新技術と新薬開発に取り組んでいる。

実際の所、『バイオテクノロジー』や『バイオ医薬』は、IT技術と同じく世界のどこででも新しい技術を開発することが可能だ。

癌治療薬、生活改善薬、免疫薬などの開発には多大な資金が必要となるが、一度新薬の開発に成功すれば、膨大な利益を享受できることから、多くの投資家等が最新技術を持つ企業に投資を行っている。

実際に世界のバイオ企業は過去10年を見ても大きく躍進してきた。しかしながら、バルト3国の企業はどちらかというと陽の目は見ず、蚊帳の外に置かれていた。

では、この3国にバイオ技術を持った有望な企業が存在しないのかと言えば、ストーリーは全く異なってくる。

バルト3国には医薬品メーカーも存在し、研究所を整える大手企業もある。彼等の能力は、薬品製造から海上に流出した石油の清掃技術まで有している。

バルト3国の薬品開発の能力がどれ程の物であるかを探るには1960年代、70年代のソ連時代にまで遡る必要がある。

ソ連時代に、ソ連政府はバルト3国に新たな技術投資を行うことを決定している。それには、実は遺伝科学も含まれていた。

バルト3国に設立された医療研究機関には当時のソ連政府が大量の資金を投入したことから、エストニア、ラトビア、リトアニアの医療技術を育て、またその石杖を構築していった。

そして今日、バルト3国から世界へ最新のバイオ技術を携えた企業が世界デビューを図ろうとしている。

エストニアには、学術都市タルトュにタルトュ大学の研究プロジェクトとして始まり、既に何社ものバイオ企業が誕生している。そして同大学ではエストニアゲノムプロジェクト(Genome Project)*も立ち上げられ、大きくその成果が陽の目を見ている。

*エストニアが国家を挙げて邁進して来たGenome Projectと呼ばれるDNA解析事業。エストニアでは、既に国民の8割以上の市民のDNA解析を終え、国家戦略として、人のDNAを解析させて未開発の薬品などに解析情報を提供している。技術レベルは、同プロジェクトが有力な米企業との共同事業として進められてきた経緯からも、世界最先端のレベルを誇示している。

同大学発のベンチャー企業は、他バルト3国のバイオ企業と同じく、1990年代に集中して設立されてきた。

欧米のバイオ技術者等はこの地域のバイオテクノロジーを『赤いバイオテクノロジー』と呼んでいる。業界用語だが、要は医療、医薬品などの分野の事である。

現在、バルト3国のバイオ研究機関が顧客とする企業の大半が西側諸国の企業で、多くがアメリカ、カナダなどのこの分野に強い国々となっている。
 
簡単に言えば、バルト3国のバイオ企業もしくは研究所は西側企業の研究開発を支える存在にまで存在感を強めているということだ。

バルト3国のバイオ技術の強みは、既に十分に蓄積されている強力なデータベースに支えられている。今の段階は、今後この強みを如何に生かしていくかとの段階に入っている。

エストニアバイオテクノロジー協会(Estonian Biotechnology Association)によると、エストニアは毎年500名余りのバイオを学ぶ優秀な学生がおり、彼等は単にバイオを学ぶだけではなく、化学、医薬の分野も共に学んでいるという。

ラトビアの投資開発局では、バルト3国のバイオ企業にとって、単にバルト3国だけではなく、近くには、超大国ロシアを筆頭に、ウクライナ、ベラルーシなどの国々が加盟する総人口2億人もの独立国家共同体(CIS)が将来的にバルト3国のバイオ企業の成長を支える所以となると指摘する。

そして、賃金上昇が急速であると懸念されるバルト3国ではあるが、それでも賃金水準は西側諸国と比べて半分以下ということからも、今後数年はこの分野での国際競争力は優位性を保つと見られている。

エストニア政府では、早くからバイオ技術に目をつけ、国を挙げて同分野に携わってきたが、エストニアが狙うこの分野の最終ゴールとは、実は、例えばプラスティック製のコップから食品を作ったり、医薬品を作ったり、環境保護対策を講じたり出来る多様な技術の開発により、将来的な国家繁栄を目指している。

ただし、この分野の問題点は、そう簡単に新たな技術開発は出来ない点にあり、企業が成長するには時間とお金がかかるということとされている。

実際に今、エストニアには40社余りのバイオ企業が存在する。そして世界からベンチャーキャピタルが競って資金を投資している。その一つにRainer Nolvak氏(週刊バルトジャーナルVol.131号参照)が率いる抗がん剤企業Celecure社もある。同社にはスカイプで成功した技術者等が立ち上げた投資会社Ambient Sound Investmentsも投資する。

バイオ企業への投資の難点は、IT企業への投資のように短期的な成功は余り望めないことにある。バイオテックへの投資スタンスは、あくまでも長期的でいなくてはならない。医療薬の開発が成功し、許認可を得るには、少なくても5年から10年の年月が必要とされている。ただし、一度成功すると巨万の富を生むことになる。

今、エストニア企業では、この年月を逆利用し、自身が持つ最新技術を駆使して、西欧の他社へ技術サービスを提供し始めている。このサービス事業により流動性資金を確保する努力に勤めている。

例えば、自社が開発した遺伝子試験技術を使って、自宅で出来る遺伝子試験キットを商品化させたところもある。

一方、隣国ラトビアでは、大手が市場を牛耳る兆候が見え隠れする。現在ラトビアには51社のバイオ関連企業が存在するが、その頂点に立つ2社、医薬品メーカーGrindex及びOlainfarmの存在が際立っている。この2社の力が余りにも強力
なため資金が中小企業に行渡らないという問題が起きている。

リトアニアに関しては、エストニア、ラトビアと比較して、あまりこの分野に力を入れているとは正直言えない。リトアニア発明センターによると、リトアニアのバイオ産業の規模は小さく、企業数も5社もしくは6社に過ぎない。

バイオ市場というか医薬品市場をほぼ独占する企業にFermentasという企業があり、従業員は300名余りと多い。商品も世界70カ国へ販売し、06年度の売上高は5070万リタス(約23億8000万円)と05年度からは35%も売上を伸ばしている。

ただし、リトアニアでは、Fermentasが全てである。1社がこの産業を支えていると言っても過言ではない状況となっている。リトアニアの問題は、大企業一社が技術者を全て青田買いしてしまい、ベンチャー企業に人材が集まらないという点にある。

しかしながら、Fermentasとしても現状を良しとはしておらず、中小のバイオ企業に合併を即し、新薬開発に同社としても協力できればと柔軟な姿勢を示し始めている。

これらを踏まえると、バルト3国でバイオテクノロジーに最も先を行っているのはエストニアで、今後も研究段階からいくつかが事業化し、新会社が誕生することが予定されている。

そして近い将来、最新技術そして最新医薬品の特許を持った企業群が買収合併などを介して、エストニアに新たな巨大企業が誕生することになるのかもしれない。

因みにバイオテクノロジーには『赤いバイオテクノロジー』の他に『白いバイオテクノロジー』『緑のバイオテクノロジー』『青いバイオテクノロジー』というのがある。

赤は、医療、医薬品分野を意味し、白は食品加工分野など、緑は農業分野、青は海の分野を意味するのだという。

一分野に特化することで、その世界で成功することをバルト3国の企業は目指しているのだろう。

現在、バルト3国の薬品メーカーで株式公開を果たしているのは、ラトビアのGrindeksとOlainfarmの2社だけである。

近い将来、多くのバイオ企業が株式公開を果たしていけば、 医療に力を入れるバルト3国として、この地域が医薬品開発のメッカと世界から称される日が来るかもしれない。




Copyright (c) 2004 CPGBalticsOU All rights reserved.
本ホームページの全部または一部を 無断で複写複製(コピー)することは、 著作権法上での例外を除き、禁じられています。