ペッパーサックGuy
メールマガジン
07年1月1日からブルガリア、ルーマニアがEU加盟を果たすことが決まり、巨大化する欧州・中東欧に続き、巨大市場として台頭しつつあるロシア、GDP成長率が10%を上回るバルト3国、国営企業の民営化を急ぐCIS諸国といった地域の経済状況などの情報を配信しています。

メールアドレス:

→詳しくはこちら


i-modeにて最新経済ニュースをいつでもご覧いただけます。

広告掲載について

トップ > 週刊バルトジャーナル140号から
個人情報保護は守られるのか?〜リトアニア〜

 

欧州連合が電話やSMSなどの通信記録を残すことを加盟国に求めている。世界的なテロ対策への取組みの一旦として同様の通信をいつでも捜査できるようにしておくことが本当の狙いであると見られている。

EUの指針に則り、リトアニアでも全ての電話やテキスト・メッセージの詳細を警察が管理監督することが進められている。

リトアニア国会では、11月早々にも欧州連合が求める通信における全てのデータ(会話内容を除く)を保管するか否かを承認する協議が開かれる。人権的な見地から、一方的に個人情報とも言える通信記録が保管されるということは人権を侵しているとの意見もあり、そして、通信会社が同様の記録保管を行う上で設備増強が必要となることから、その負担分を消費者に通信料の値上げとして振ってくるのではとの懸念も持ち上がっている。

これらの協議は、欧州連合加盟国の中でも同様に協議され、賛否両論といった感じだが、一部の欧州市民の間ではこの問題は差し迫った問題だと危惧する声が挙がる一方で、政治家の間では大きな問題とは考えていないとする者が多い
といった双方の認識にギャップが見られる。

2006年3月に欧州連合では全ての加盟国は通信データを保管するとした方針を承認し、これに基づき欧州連合では、各国政府に対し、各国の通信企業へ過去6ヶ月間から最大2年間の全通信データの記録を全て残しておく義務を課した。

記録が義務付けされたデータには、如何にその通信が行われたのか、誰から誰へ通信されたのか、通信時間などが含まれる。

テロへの恐怖は、実際にロンドン、マドリッドで仕掛けられたテロにより大量の死傷者が出たことから、欧州市民の安全保護を謳い、今回の指針が承認されている。

テロやあらゆる危険な犯罪行為を如何に水際で止めるのかを考えた場合、関係当局が不法行為を行わずに個人情報を容易に取得出来るようにしておくことが必要だとの判断が背景にある。

が、しかし、これまで各欧州連合加盟国では今方針の承認を遅らせてきた。その理由は、やはり一体この政策は合法なのか、この指針の実施により長期的に通信会社や社会に如何なる影響を及ぼすことになるのかなどの懸念事項が多々存在することで議論が止む事はなく、協議が続けられてきた。

そして、リトアニアでは国会内で漸くこの協議に終止符が打たれようとしている。リトアニア政府の意向は、同指針を承認するということらしい。

しかしながら、リトアニア運輸通信省内のValentinas Kvietkus電子通信課課長は、『本心として実際に同省内で真剣な協議が持たれずに今回の決定がなされたことに大きな困惑を感じている』と語っている。

Kvietkus課長は、2003年から06年8月まで欧州連合でリトアニアの通信代表部代表という職にあり、欧州連合で今方針が承認された際にはブリュッセル本部にいた。

Kvietkus課長は、『今政策をよく吟味し、背後にある本当の狙いなどを良く理解する必要がある』と考えている。

同様の政策導入の方針を承認する国が過半数を超えるのには実際相当の時間が掛かると考えられる。既にアイルランドやスロバキアでは反対意見が占め、アイルランドでは欧州司法裁判所に今件について問題提起を行っている。

欧州連合の指針承認を受けて、リトアニアでは06年9月から電子通信に関する法律改正を行う準備に着手している。運輸通信省では既に省HPの中で改正内容を市民等に伝ええており、これは早々に改正内容を公にすることで国民のコンセ
ンサスを取ることを狙ったものとなっている。

現在の電子通信法(Electronic Communications Act)では個人の情報保護が謳われているが、早々の改正が行われようとしている背景は、改正前に問題が複雑化し国民からの支持が得られなくなるのを避ける為にも早い段階での決定が必要だとの政治判断がなされていると考えられている。

そしてリトアニア国会では、11月の第2週にもこの承認がなされようとしている。

通信会社、人権団体、政府/民間機構ではこの政府の早い決定に強い懸念を示し、欧州データ保護監督者法律アドバイザーを勤めるHilke Hijmans氏もリトアニアの動きに、欧州連合各国との間で経費、記録保持期間、データの種類、データ
取得方法などで統一されたコンセンサスがない状態で法律改正を急ぐことに問題があると批評の声を挙げている。

通信会社も一体この記録保管を行う上でどれほどの費用が必要となるのか困惑しており、イギリスでは、企業負担として2600万から2900万ユーロの年間経費が必要になると試算されている。

欧州連合が決めている方針の中では、一切コスト負担への補償が盛り込まれておらず、全て対応各国が自身で決めることになっている。

リトアニアで協議されているこの経費負担問題は、通信会社に負担増を利用客に振ることを認めるのか、納税者から税負担という形でコストを補うのか、実際には多くの点がまだ何も決まっていないというのが実状だ。

全ての通信会社に均等な義務を課すことが絶対遵守とされるが、大手通信企業の一つTEOでは既にこの政府の指針には反対を表明している。

同社では、この法案が承認されれば、企業には更なるコスト負担になり、経営に影響も出かねないとの見解で、もし実際に国家の意向として施行されるのであれば、民間企業レベルの問題ではなく、国家がその負担を負うべき類の問題だとし、経費負担は企業ではなく、国家が負うべきだとの立場を強調している。

今回の欧州連合の指針には会話内容の保管は盛り込まれてはいない。保管を求められているのは、通信場所、日時、通信時間、SIMカードの開始、サービス開始場所などである。

人権支援団体のHenrikas Mickevicius代表は、通信データの取得乱用で無実の市民が何らかの間違いで犯罪者に仕立てられることも考えられると懸念を示している。

Mickevicius代表によると、実際、誰が取得データの管理監督をし、如何にそのデータが使われたのかなどをどう監督するのかなど、あらゆる問題を精査してから今法律改正を行うべきかを決めるべきだという。

今法律改正は直に承認されることになるだろうが、この1年以上の間、通信記録のモニタリングが実際にリトアニアで施行されることになることを真剣に政治家間で協議されたことはなく、リトアニア国民は知らずの内に自身の通信記録が何の為とも知らず保管されることになる。

個人情報保護は実際に守られるのか、国民を納得、安心させられる政府からのメッセージはリトアニア政府からは何も出されていない。




Copyright (c) 2004 CPGBalticsOU All rights reserved.
本ホームページの全部または一部を 無断で複写複製(コピー)することは、 著作権法上での例外を除き、禁じられています。